さすらい投資家Qの覚え書き

割安株、成長株、有望株を探し求める中長期投資ブログ。

「壊す機械」を作るオカダアイヨンが成長している

最近注目している企業がオカダアイヨン(6294・東1)です。

大阪に本社のある創業80年の建機メーカー。建機と言っても、建物を作る機械ではなく、壊す方の機械です。同社では開発から製造、販売、修理までを一気通貫でやっています。

解体アタッチメントで国内シェアトップ

主力製品は、建物を解体する際に油圧ショベルの先端部に取り付ける「解体アタッチメント」。これは大別すると、挟んで切ったり潰したりする「圧砕機」(クラッシャー)と、叩いて壊す「削岩機」(ブレーカー)があります。

日本の解体現場では、かつては叩く方の削岩機が主流でしたが、騒音など環境規制が厳しくなり、今では挟む方の圧砕機が主流になっています。

同社は圧砕機で国内シェアトップ(4割超)を誇ります。首都圏に限るとさらにシェアが高く(5割超)、需要旺盛な首都圏での圧倒的シェアは大きな強みです。

一方、削岩機については、同社の国内シェアは13%に留まりますが、こちらは海外売上が多いようです。海外は日本より規制が緩く、まだ削岩機が主流だからです。しかし、徐々に圧砕機も増えつつあり、同社では今後、海外で圧砕機の市場を育成したい考えです。

修理・部品販売の収益も

解体アタッチメントは、硬いコンクリートや鉄筋を相手にするため、擦り減る、割れる、折れるなど、どうしても劣化が激しくなります。同社では全国の各拠点に営業マンだけでなく、メンテナンス部隊も常駐させ、トラブルにすぐに対応しています。業界でこの体制を整えているのは同社だけとのことで、強みの一つになっています。

そのため、修理・部品販売の売上もコンスタントにあります。

北米、アジア、欧州で販売拡大中

同社の海外販売比率は20%弱。内訳はざっくりと北米7割、アジア2割、欧州1割ほど。どのエリアでも年々販売が伸びています。

米中や日米の貿易交渉については、同社には直接の影響はないとのこと。まず、中国には同社は販売していません。過去に検討したことはあるそうですが、投資メリットとリスクを考え、実施に至らなかったそうです。また、米国内には削岩機メーカーがないため、関税の対象にはならないと見込んでいます。

「北米ではオカダアイヨンの存在感をそこそこ示せている」という状況になってきたそうで、今後、アジア、欧州も含めて、積極的に海外販売を拡大していく方針です。

災害時に活躍する「つかみ機」、バイオマス発電に貢献する「木材破砕機」も

同社の製品には「つかみ機」(グラップル)や「木材破砕機」などもあります。

瓦礫処理などで活躍するつかみ機は、東日本大震災や広島・岡山の水害時には自衛隊にかなり納入したそうです。

バイオマス発電施設の燃料チップ作りなどに利用される木材破砕機は、同社が欧州から輸入し、国内で販売・メンテナンスをしています。

M&Aで「林業機械」に進出

同社は2017年、熊本の林業機械メーカー「南星グループ」を買収しています。

国内林業は斜陽産業と思われがちですが、同社によれば、今や成長産業だと言います。かつては輸入木材に押されて衰退しましたが、政府が2009年に木材自給率の向上を掲げて以降、木材自給率は右肩上がりとなっており、今では36%まで回復しています(政府目標は2020年に50%)。バイオマス発電施設の燃料チップの需要増加も影響し、木材総需要量は7年連続で増加中とのことです。

地球温暖化の防止、また、土砂崩れを防ぐ防災の観点からも、森林の活性化は取り組まなければならない課題であり、採算性もあると同社では考えています。

南星グループとのシナジーを期待

買収した南星グループとはシナジーも期待されます。南星は熊本に工場を持っており、メーカーの中では製造主体の川上の会社。オカダアイヨンは埼玉に工場がありますが、自社製品の半分は協力工場にお願いしており、メーカーの中では販売やメンテナンスの川下が強い会社です。

「川上に強い南星」と「川下に強いオカダアイヨン」が一緒になったことで、オカダアイヨンの製品を南星の工場で安く製造し、南星の製品をオカダアイヨンがメンテナンス付きで高く販売する、との目論みもあるようです。

また、現在の国内拠点はオカダアイヨンと南星で重複しいる場所が多く、今後は各拠点を統合して効率化を図るとしています。

2019年3月期の進捗は良好

解体分野は老朽化したインフラやビルの建替え、首都圏再開発などの需要が旺盛で、それは今後も当面続きそうです。建設業界の中では、東京五輪後の需要減少リスクが小さい分野と考えられます。

直近決算である2019年3月期の3Qは、売上129億(前年比20%増)、営業利益11億(同26%増)、経常利益12億(同29%増)、当期純利益7.5億(同81%増)と好調です。通期計画に対する進捗も、売上が73%、利益は81%ほどで上振れも期待できそうです。

株主優待QUOカード)もあり

同社では近年、連続増配を続けており、直近株価1,335円で配当利回り2%ほどです。QUOカード株主優待も導入しており、100株以上で1,000円分、200株以上で2,000円分、500株以上で3,000円分となっています。配当、優待ともに3月末の株主が対象です。 

ところで「アイヨン」とは?

ちなみに社名の由来ですが、「オカダ」は創業家の名前です。「アイヨン」は同社が昭和30年代に販売して大ヒットした削岩機から取ったもの。品番が「IPH(アイピーエイチ)400(ヨンヒャク)」で、通称「アイヨン」と呼ばれていました。これが削岩機の代名詞として業界で定着したこともあり、社名を改称したそうです。

ちなみに先日、同社から社長交代のリリースがありました。4月1日付で現在の苅田社長が会長となり、40代の新社長が就任します。新社長は岡田姓なので創業家の出身でしょう。20代で同社に入社し、経験を積んでいるようです。手腕に期待したいと思います。